活動内容

いろいろと先進的な取組みで、注目されることも多い豊中市ですが、社会福祉法人 豊中市母子寡婦福祉会が平成24年(2012年)4月から主催する、ひとり親家庭の中高生を対象にした学習教室もそのひとつです。全国から見学者が訪れています。
豊中市母子寡婦福祉会は、昭和25年(1950年)の設立から、夫や父親を失って母と子で生活する家庭を支援してきました。現在は、就業や育児、法律についての相談を受けたり、就職等に役立つ講座やバスツアーといったレクリエーションを開催したりしています。

この学習教室は、相談等の中で保護者たちから出た「子どもがなかなか自主的に勉強しない」という悩みに応えて、立ち上げました。講師の派遣は、ひとり親家庭の中高生の学習支援を行う特定非営利活動法人 あっとすくーるに依頼しています。

生徒は毎週土曜日の10時から15時に問題集など自分の勉強したいものを持参して各々勉強し、わからないところは大学生の講師に質問する形で進められています。生徒と講師のコミュニケーションを大切にしており、必要に応じて個別に進路や学習方法の相談も行うほかクリスマス会など楽しいイベントもあり、学習だけでなく精神面も支援する機会と場所になっています。また、費用も月3,000円と経済的にも通いやすく設定されています。

活動の様子

ある土曜日に、この学習教室に伺ってきました。教室に入ると、10名ほどの生徒が集中して問題を解いている間を、3名の講師が一人ずつに声をかけながら巡回中でした。そして休憩時間になると、講師も生徒も関係なく、参考書のことや地域のイベントのことなどを話す、和気あいあいとした雰囲気に。そのメリハリが印象的でした。

中学時代に参加し、高校に無事合格してからも通い続けている生徒は「ひとりだとなかなか勉強する気になれないけれど、ここに来れば集中して勉強する習慣がついたし、学校や学年の違う友達ができるのも楽しい」と話してくれました。また、「学校の友達には気を遣われたくなくてひとり親家庭のことを伝えていなかったけれど、ここでは気兼ねなく“お金がない”といった話もできて、居心地が良かったです」と、生徒から大学進学を経て講師になった例もあるそうです。

講師からは、「何気なく“早く帰るように”と言ったら、生徒から“帰っても誰もいないから”という返事が返ってきて、ハッとしました」「“妹が通うためには自分が辞めないと、月謝が払えない”という生徒がいて、想像以上に厳しい状況なんだと驚きました」との声が上がり、それまで知らなかったひとり親家庭の事情を知り、問題意識を持つようになったそうです。また、ちょっとした会話の中で講師が生徒から「最近学校に行っていない」と聞き、社会福祉法人 豊中市母子寡婦福祉会に伝えて、共にその解決に当たったこともあったそうで、生徒と講師の信頼関係が築かれていると感じました。

伝えたい想い

この学習教室は、「ひとり親家庭」という共通の環境にある子どもたちの居場所であるとともに、勉強の習慣を身につけてほしいと、始めた事業です。

一方、あっとすくーるは、自らもひとり親家庭に育ち、大学でひとり親家庭の貧困問題を知った渡剛さんが、経済的困難を抱えるひとり親家庭の子どもが、将来に対して希望を持ち努力ができる社会をめざして起業しました。講師は、その理念に共感する大学生です。学習教室を単に勉強するだけではなく、生徒が自分の進路や将来像を描いて、前向きな気持ちを持てる場所にしたいという豊中市母子寡婦福祉会の思いと同じ理念を掲げていることから、連携を決めたそうです。

この、さまざまな困難を抱えたひとり親家庭の生徒が、経済的な問題で学習の機会をあきらめることなく仲間作りができるとともに、目標や将来への希望を見出せる事業が、「もっと多くの生徒に来てもらえるようにPRに力を入れたいですね」と、豊中市母子寡婦福祉会の職員の方が今後の抱負を語ってくれました。

取材日2014年6月7日

 

活動日

毎週土曜日 10:00~15:00

連絡先

社会福祉法人 豊中市母子寡婦福祉会
豊中市中桜塚2丁目29番31号
豊中市立母子福祉センター2F
TEL/FAX 06-6845-1333
豊中市母子寡婦福祉会:http://toyonakaboshi.com/
あっとすくーる:http://atto-school.jimdo.com/