豊中駅から東に歩いて15分、閑静な住宅街を歩いていくと、大きなグラウンドが特徴的な大阪府立豊中高等学校が見えてきます。豊中高校は1921年に設立されて以来、今年で101年目を迎える伝統のある学校です。そんな豊中高校には『課題研究』という全国の高校の中でも特色のある授業があります。今回はこの『課題研究』について、担当の先生と生徒の皆さんに授業内容や大切にしている想いを伺ってきました。

授業の様子

豊中高校の特色のある授業である『課題研究』とは、生徒自らの興味・関心に沿って研究するテーマを決め、一年間かけて問題の背景や社会的意義を調べ、発表するという授業です。具体的な内容としては、4月に「国際関係・異文化理解・人間科学・地域創生」と分かれたカテゴリーの中から生徒が気になったテーマを選び、クラス関係なくグループが作られます。そこから研究の骨子(仮説や問題の背景、社会的意義は何かを書き込めるようになっているワークシート)に沿って問いを深めます。10月に中間発表、翌2月に「豊高プレゼン」で最後の発表を行います。
豊中高校の『課題研究』は、大阪府立高校に文理学科ができた2011年に豊中高校を含む大阪府立GLHS指定高校(※)で取り入れられた『課題探究』をもとにスタートし、今年で10年目になります。2022年度の学習指導要領改訂で「総合的な学習の時間」の授業が、変化の激しい時代において課題解決能力を養うための授業に変わるのですが、これから全国の高校で始まる授業を10年前から先駆けて実施しているのです。

取材日には、人間科学のテーマで「服の大量廃棄問題」について調べているグループの皆さんにお話を伺うことができました。この日は「豊中市立EMIRAIE環境交流センター」で、自分たちで制作・編集した服の大量廃棄に関する啓発動画などを展示し、生徒自ら市民の皆さんに話しかけてアンケート調査を行っていました。このグループは元々、「服の売れるレイアウトを考案する」というテーマを設定していたそうですが、調べていくうちに服の大量廃棄の問題についての記事がたくさん見つかり、こちらのほうが解決しないといけない問題だと意見が一致し、今の研究テーマに至ったそうです。

テーマを変更した後は、担当の大野先生のアドバイスを得て、「ごみゼロ」を目標に13品目45分別でリサイクル率81%を達成している徳島県上勝町にメールでインタビューをしたり、市内で子ども服のリユース活動を展開する「Urban Innovation TOYONAKA(アーバンイノベーション豊中)」の仕分けを手伝うなど、外部団体にもアプローチして研究を深めました。生徒の皆さんは、「今までは服のセールの日に大量生産されている安い服を買っていたけど、そういう服ではなく長く使える服を選ぶようになりました。専門家にお話を聞いたり、参考文献を集めることは大変だったけど、メンバーのみんなと協力して進めることができたので良かったです」と笑顔で答えてくれました。

3月にオンラインで行われる課題研究の全国大会(関西学院大学・大阪教育大学主催 WWL・SGH×探究甲子園2022※)にも探究活動プレゼンテーション部門に校内で唯一エントリーしており、今後は、その発表に向けて今回集めたデータの集計や文献調査を進めていくそうです。

大切にしている想い

『課題研究』の授業で先生方が大切にされているのは、あえて生徒の学習に干渉しすぎないということです。これは、生徒から聞かれたことすべてに答えるのではなく、「君たちはどう思う?」「〇〇分野の論文にあたってみると良いかもね」と質問で返すことによって、生徒の主体性を引き出すことが狙いです。もちろん、すべて放任すると生徒たちも何をしていけばいいかわからなくなるので、最低限のスケジュールやその週に何をするかは先生たちの間でミーティングを行い、話し合っているそうですが、このように授業を行うことで生徒たちの様子も変化してきたそうです。

大野先生は、「4月に比べて自分たちで動いて計画を立てる生徒たちが増えてきたように感じます。私たちも知らないことは一緒に学びながら、生徒と一緒に授業を作っていけるよう努力しています」と話してくれました。先生方のこの姿勢があるからこそ、生徒も自分自身の興味関心に沿って柔軟にテーマを選び、課題解決能力を養っているのだと感じました。

変化の大きな現代において、豊中高校の『課題研究』はこれからの時代を生きていくために必要な能力を養う先進的な授業です。高校時代から、一方的に知識を学ぶだけでなく、自ら課題を見つけて解決し、発信するという授業を体験した若者たちの将来が楽しみですね。

(取材日 2022年1月8日)

※1
大阪府立GLHS指定高校…グローバルリーダーズハイスクールの略で、「豊かな感性と幅広い教養を身に付けた、社会に貢献する志を持つ、知識基盤社会をリードする人材を育成する。」ことを目的とし、文理学科を設置する。現在10校。
※2
WWL・SGH×探究甲子園2022
参考URL http://tankyu-koshien.jp/index.html

連絡先

大阪府立豊中高校
豊中市上野西2丁目5-12
TEL 06-6854-1207
HP https://www2.osaka-c.ed.jp/toyonaka/