活動内容

全国的に社会の課題となっている、ひきこもりやニート、生活保護といった問題。ZUTTOは庄内に事務所を構え、生きづらさを抱えて孤立しがちな若者達の居場所「若者居場所工房ぐーてん」や、持病等による長期生活保護受給者などの生活困窮者が気軽に集まれる「居場所くらし応援室」の運営、パソコンやデザインなど得意分野を生かした若者の仕事づくりなどをしています。

「自立する」「就労する」「人や地域とつながる」「自分を大切にする」の4つを目標に2010年にスタートした「若者居場所工房ぐーてん」。今年度は日本郵便年賀寄付金助成事業として、毎週月曜日に牛乳パックを再利用して紙漉きかみすをし、できた和紙をコースターに加工して近くの食堂に卸すほか、保護者・支援者向けの講演会&相談会や就労準備講座などを開催し、本人や家族が求めている情報を提供しています。
現在は月曜日のみの開所ですが、以前は人や地域と関わる練習として野菜の販売をしたり、地域のイベントに参加したりしてきました。

ぐーてんには10年以上ひきこもっていたという若者も訪れます。温かく和気あいあいとした雰囲気のおかげか、多くがここに通い続けて成功体験を重ねることで少しずつ自尊心を育み、アルバイトなど次のステップに進んでいるとのこと。たとえば、ぐーてんでスタッフや他の利用者と関わる中で器用さや数字に強いといった長所がわかり、消しゴムハンコの作成をするようになった利用者がいました。現在はぐーてんで作成しているコースターに押すハンコも作成しています。彼は自信をつけて、その後各食材の計量が重要な惣菜づくりという得意なことを生かした仕事に就き、長続きしているそうです。「最終的な目的は社会に出ていくことなので、時には失敗するのがわかっていても黙って見守り、自分で考えて解決できるよう導くことを心がけています」と、スタッフの柴垣さん。

豊中市雇用労働課より委託を受けている「居場所くらし応援室」では、おしゃべりやワークショップなどを楽しむ「居場所プログラム」、みんなで食事を作って食べることで健康などについて考える「食べプロ」、軽作業の体験を通じて自分に合った仕事を発見する「職プロ」などを実施。利用者は自分の希望や目標に合わせて参加しています。定期的に外出する機会を持ち、毎回最初に血圧や体重測定といった健康チェックを自分で行うことによって日常生活のリズムをつくり、社会参加を促しています。プログラムの前日に必要な材料を持ってきたり、元大工の利用者がぐーてんの看板を作ってくれたりと、スタッフも、「楽しみにしてくれているんだな」と、利用者が誰かの役に立つことに喜びを見出していると感じているそうです。

「豊中市重点分野雇用創出事業」として受託している「ニートひきこもり等のICT(情報通信技術)デザイン分野就労支援モデル事業」では、正職員として働いた経験はないけれどパソコンやデザインは得意、好きという若者3名が、来年度の就職を目標に活動中です。プロから研修を受けながら、『庄内電脳彩り団』と称して、ホームページの作成・更新やパソコンのトラブル解決、チラシ・名刺・ロゴ・メニューなどのデザイン制作などを地元庄内の商店街店主に無料で提供し、地域の情報発信のお手伝いをしています。10月には初回からZUTTOが関わっている庄内バルの第3回でマップやホームページの作成を一手に引き受けました。また、冬休みには子どもパソコン教室も開催し、活躍の場を広げています。


メンバーは、「やってみたら“意外にできるな”と思いました」と自信をつけたり、「ひとりだと何時間も悩む問題が、仲間に相談したらアッという間に答えが出ました」と、チームで協力して仕事をする醍醐味を実感している様子。商店主からも、「パソコンのことで困ったときは、いつでも親切に教えてもらえるから、本当に助かっているよ」と丁寧な仕事ぶりが評価されています。スタッフの三宅さんも、「これまで否定され続けてきた経験を持つメンバーもいますが、商店主などから“ありがとう、天才やな!”などと喜ばれることで責任感も芽生え、表情が引き締まってきましたね」と、3人の成長を支えています。来年度からはそれぞれ就職をめざす3人。その準備としてスーツ姿でパソコンに向かう姿が印象的でした。

さらに2013年9月には、「豊中市起業支援型地域雇用創造事業」として、「地域バル発展型ポータルサイト創業事業」がスタート。企業の広報や飲食店勤務など様々な経歴を持つメンバーが集まり、2014年2月に庄内を中心に市内店舗やバルなどのイベントを紹介するポータルサイト「まいぷれとよなか」を立ち上げるために、日々庄内を駆け回っています。「今までのイメージとは違う、新しい庄内をアピールしたい」と、抱負を語ってくれました。委託事業の終了後も継続できるような、魅力あるサイトづくりが期待されます。

伝えたい想い


このように、ZUTTOが運営している各プロジェクトは、さまざまな問題で社会から孤立しがちな人たちのよりどころとなっています。ぐーてんのスタッフは「ここは次のステップに進むために力を溜める場所」と言います。共通して掲げているのは、性別や年齢、国籍、その他の様々な違いにとらわれることなく、誰もが地域で輝き、そして生き生きと働ける社会の実現です。
ですが、現在の事業はほとんどが1年間といった期限付きの助成金や委託事業に頼っており、継続した事業の計画が難しいのが現状です。「引きこもりや生活保護など問題を抱えた方が“ここに来たい”と思うタイミングはそれぞれ。その機が熟したときにいつでも受け入れられる場所を守りたい」というのがスタッフの切実な願いです。ZUTTOの活動が「ずっと」続くことを願ってやみません。

取材日2013年11月22日

追加取材

2015年末にスタートした「ぐーてん子ども食堂」にうかがいました。共働きや親が夜働いているひとり親家庭など、遅くまで一人または子どもだけで留守番をして食事をとる子どもたちに、友達や地域の大人と一緒に温かいご飯を食べ、楽しい時間をすごしてほしいと月2回開催しており、おじゃました10月16日はすでに第41回目でした。毎回、ぐーてんのスタッフのほか、「子ども達のために何かしたい」というボランティアが心を込めて料理を作っています。

この日のメニューは、甘エビのクリームコロッケとポテトコロッケ、なすの煮浸し、さつま芋と玉ねぎのお味噌汁、ご飯と、充実の内容。「僕が初めて来たときもコロッケやった!」とうれしそうな声があがり、子どもたちが子ども食堂を楽しみにしていることが伝わってきました。また、様々な年齢の子どもたちが一緒に並んで座り、年上の子どもが年下の子どもに「〇〇ちゃん、ごはんもう少し食べられる?」と声をかけるなど、かいがいしい様子に感心しました。昼間の活動に参加していた若者も引き続き参加し、子どもたちとしゃべったり、「最近どーなん?元気にしてたん?」と声をかけるスタッフの和田さんに心療内科に行ったことを話すなど、気兼ねなくしゃべることができる居場所となっているようです。

食材は、近隣の会社や北摂アグリフードといった団体からの差し入れのほか、ご近所から野菜や現金の寄付もあるそうです。この日のコロッケや野菜も差し入れだったとのこと。また、スタッフやボランティアが子どもの送迎をするなど、校区外の子どもでも来やすいよう工夫されています。
「月2回の子ども食堂の時だけでなく、昼間にぐーてんに寄ってくれたり、近くを歩いていたら、“ぐーてんのおばちゃんや!”と声をかけられるようになったのがうれしいし、”町の中に知っている大人がいる”ということで、危険に巻き込まれる予防にもなっているのかな、と思っています」と、理事長の津田さんが言うように、食堂の時間だけでなく、地域に新しいつながりが生まれているようです。

ぐーてん子ども食堂
●開催日時:第2・4月曜
  17時~18時:宿題・遊び
  18時~20時:食事・遊び
●参加費:こども(18歳未満)0円、おとな300円

取材日2017年10月16日

連絡先

●NPO法人ZUTTO
〒561-0832 豊中市庄内西町4-25-5
TEL:06-6842-7129 FAX:06-6842-7139
E-mail:info@npo-zutto.com
http://www.npo-zutto.com/
●若者居場所工房ぐーてん
公式HP:http://guten.npo-zutto.com/
https://www.facebook.com/guten.zutto/

●まいぷれとよなか
紹介HP:http://toyonaka.npo-zutto.com/